wpe5.jpg (3767 バイト)

短     歌

kani.gif (155 バイト) 2005/3/1 新設

色紙 森 利子 氏

 

鰐浦のヒトツバタゴが咲き渡り

海を照らして人を魅了す

-初作品、初新聞投稿入選-

 

水面から湧き出るように光舞い

幻想の夜に誘う蛍

 

魅せられし蛍の命儚くも

恋し焦がれて光燃え尽く

 

浅茅湾の景色に見惚れ万葉に

歌を遺すは遣新羅船

遣新羅船は対馬・浅茅湾(あそうわん)に停泊多くの歌を万葉集に遺す

 

浴衣着て参拝の子らその手には

御札と菓子持つ地蔵盆の夜

 

島の秋に満天の星眺むれば

視野を横切るアキマドボタル

 

豆酘崎の断崖に立ち見渡せば

太陽真っ赤に大海に燃ゆ

対馬南端豆酘崎(つつざき)

 

一葉は時空を超えて桃水の

生地に来たり新札になり 

半井桃水(なからいとうすい)は厳原出身、樋口一葉の師であり恋人

 

妹想い海を眺めて袖濡らし

木枯し染みる防人の島

防人は厳原・袖振山から海を眺めたのであろうか

 

夕暮れに石焼き芋の売り声が

静けさ破り腹の虫鳴く

 

穏やかに白く輝く春の海

陽はまた昇る我が心にも

 

胃も肺も管で繋いで八年を

妻の介護で命を繋ぐ

-啄木風短歌全国公募 入選-

 

春を待つ我が目の先に蕗の薹

にかみながら頭擡げる

 

朝凍みて窓を開ければなごり雪

色鮮やかに藪椿映ゆ

 

病む我のベッドがたがた震度四

初体験に妻も戸惑う

2005/3/20(春分の日)福岡西方沖地震で厳原は震度4

 

雨上がり夜の帳が下りし頃

窓に蛍の光映ろう

 

蚊に刺され思わず挙げる痲痺の手を

掻けるはずなく苦笑いする

 

いにしえに思いを馳せる通信使

日韓繋ぐ「アリラン祭り」

 

浦上の空に鳩舞う祈念日の

節目の年に誓い新たに

 

澄みて眼下開くる浅茅湾

小さき島の点々浮かぶ

 

餌の無きか前の林に猪の

山芋掘りし跡の残れり

 

空澄みて見えるはずなき島々に

目を疑うは島寄せの海

晩秋から冬にかけて島寄せ現象が見られる。蜃気楼の一種で、空気と海水の逆転温度差で起こる。

 

落葉の小枝に淡く花咲きて

心を染むるゲンカイツツジ

 

卯の花のかほり漂ふ朝の庭

風は頬撫で不如帰啼く

 

車椅子に座して白嶽眺むれば

雄姿にしばし時を忘るる

 

やはらき日差しを浴びて秋桜の

見渡す限り秋を織りなす

 

つるにたおわに実るサルナシの

甘きかほりに秋を見つけり

 

今宵またメールに見ゆるみどり児の

笑みを浮かべて爺ばば癒す

 

木枯しに人恋しきかツシマジカ

庭先に来てしばし戯る

 

生き物の憂いが募る温暖化

一月なのにタンポポの咲く

 

真鶴のVの字描き北帰行

ウイルス避けて無事渡りゃんせ

 

なす山に真白き山法師

自然が創る夏の生花

 

島に舞ふ秋の蛍は明るくて

胤の故事に真似て文読む

 

木枯しの今朝の気温は四度八分

寒さ身に凍みホッカイロ貼る

 

声の出ず意思の疎通は「あかさたな」

頬でキー打ち音声の出る

-NHK全国短歌大会 入選-

 

われ病みて四季は移ろひ二十年

妻と道連れ苦楽分け合ふ

 

空を突く蕾も今朝は穏やかに

綻びかける庭の木蓮

 

ふんわりと雪に見紛ふ海照らし

真白き花の心も照らす

 

燃料の値上げ抗議で波高き

玄界灘も漁火暗し

 

子供らはトンボ追ひかけ汗まみれ

調べるんだ」と夏をいきいき

 

食べ物の安全神話地に墜ちぬ

肉に鰻に主食の米も

 

康平の心の眼にも見えしとう

蛍が光る里山づくり

 

今朝もまた囀りを聞き目を覚ます

日毎に上手くなりし鴬

 

子供らのけふは楽しき地蔵盆

ぱりっと浴衣に親心見す

 

寝たきりでパソコン前に歌を詠み

モーツアルトに心安らぐ

 

寝たきりで声もご飯も息衝きも

器機と道連れいつか花咲く

-日本歌人クラブ第十三回全九州短歌大会 佳作賞-

 

四肢麻痺も「謹賀新年」電脳で

生きる証を友に伝えむ

-日本歌人クラブ第十三回全九州短歌大会 佳作賞-

 

パソコンに「戻る」はあるもわが人生

戻れないから今をいきいき

 

ワクチンをひと足先に接種して

不治の病も命を繋ぐ

 

第九背に年越し蕎麦の椀見つめ

嚥下痲痺ゆえお汁だけ飲む

 

寒波にもテレビを見ればタレントの

ノースリーブにエコも呆れる

 

早蕨の萌ゆる野原をこの足で

散策するは春の夜の夢

 

三種類の躑躅ピンクに咲き乱れ

春に麗し島の山なみ

 

車椅子でヒトツバタゴを庭に見む

年に一度の命のチャージ

 

蜩を知らぬ子らゐる対馬では

何故かなかなが鳴かないのかな

 

記録的猛暑も緩び虫の音に

秋を見つけて心和らぐ

 

秋晴れに厚き支援で遠出せむ

白嶽を目に感激に咽す

 

太陽の恵みを受けて秋の日に

尾花いきいき赤トンボ舞ふ

 

丑三つに何をか愁ふツシマジカ

裏の林に鳴きてゐるなり

 

寒風にめげずに出づる蕗の薹

微かに聞こゆ春の足音

 

2004/5/22以降の短歌大会入選・佳作賞作品、朝日新聞長崎版「短歌」上川原紀人選作品他を掲載しています。

 

 

 なんじゃもんじゃランド へ































inserted by FC2 system