モクセイ科の落葉樹

 

雪が積もったと見まがうヒトツバタゴの花 対馬市鰐浦 国指定天然記念物

鰐浦のヒトツバタゴ(俗称:海照らし)海岸全景 撮影 森 正孝 氏

 

kani.gif (155 バイト)  ヒトツバタゴは、学名を Chionanthus retusus Lindl. et Paxton という。学名のように、「雪のように白い花」が観る人を魅了してやまない。そのことが知名度を高め、全国各地に移植され、「なんじゃもんじゃ」と呼ばれて親しまている。中国福建省原産で中国、台湾、朝鮮半島、国内では、長崎県対馬北端、岐阜県木曽川周辺、愛知県の一部に分布する。

 ヒトツバタゴは、モクセイ科の落葉高木である。葉は、托葉のない単葉で、長い葉柄があり対生する。緑色、楕円形、長さ3〜7pで、裏面には褐色の毛が生える。花は、4月下旬〜5月中旬に、純白で円すい状の集散花序を小枝の先につける。果実は、核果で熟すと黒くなる。雌雄異株とされているが、対馬産は完全な雌雄異株ではない。(浦田,1977、邑上,1984)つまり、両性花と、雄性花(雄株)をつけるものの2種しかなく、雌性花をつけるものはない。

 ヒトツバタゴの名前の由来は、一つ葉のトネリコ(タゴ)からきた。1825年尾張の植物学者、水谷豊文がトネリコに似た木を発見した。トネリコは複葉であるが、この木は托葉のない単葉であったので「ヒトツバタゴ」と命名した。

 トネリコ(タゴ) Fraxinus japonica Blune は、モクセイ科で、雌雄異株の落葉高木である。高さは6m以上になり、本州の山地に自生する。幹は直立して分岐する。葉は柄があり対生し、奇数羽状複葉である。小葉は5〜7個対生し、短い小葉柄がある。春、新葉に先だって、四弁淡緑色の細花を多数群がってつけ、翼果を結ぶ。材は、スキー、野球のバットなどを作る。

 ヒトツバタゴの開花は、年、地域によって若干異なる。対馬での開花は、4月下旬〜5月上旬であるが、蛭川村での開花は、5月中下旬である。

育生法

 ヒトツバタゴは、実生、挿し木で増やすことができる。実生は、8月によく熟成した果実(黒紫)を採取し、乾燥する。10月、そのまま蒔いてもよいが、発芽率が悪く2年後に発芽するので管理上不適である。

 そこで、種子を傷つけないよう注意し、硬殻をニッパー等で割って、発芽促進剤(メネデールなど)に約2時間漬けて蒔くと、発芽率は90%を超える。翌年5月、発芽したら移植する。乾燥したら潅水し、肥料は不要である。

 7〜8年で花をつけるが、接ぎ木すると花つきが早い。

 

自生地と生育地

自生地

kani.gif (155 バイト) ヒトツバタゴ自生地は、長崎県 対馬市上対馬町鰐浦、岐阜県蛭川村、瑞浪市釜戸町、恵那市笠置町、愛知県犬山市池野西洞(以上国指定天然記念物)、恵那市大井町、恵那市中野方町、岐阜県中津川市苗木、中津川市落合新茶屋(以上県指定)、岐阜県瑞浪市稲津町萩原 (市指定)である。

生育地(人為分布)

kani.gif (155 バイト) ヒトツバタゴは、各地で実生、移植により生育され、花を咲かせている。インターネット、メールによる情報提供、TV他の情報によれば、次の所に生育している。

01 北海道
03 岩手 盛岡市 岩手公園(盛岡城趾公園)
花巻市 下幅・民家
岩手郡 岩手大学農学部附属滝沢演習林
04 宮城 仙台市 東北大理学部附属植物園
08 茨城 水戸市 常磐大学構内
つくば市 筑波実験植物園
牛久市 田宮町民家
10 群馬 館林市 茂林寺境内
11 埼玉 さいたま市 総持院
鴻巣市 勝願寺、鴻巣市原馬室(北本市高尾との境界近く)の民家
羽生市 東中学校
12 千葉 柏市 麗澤高校
東京ディズニーランド内トゥモローランドミクロアドベンチャーそばのパレードルート側
13 東京 23区 明治神宮内苑、外苑、光が丘公園、東京大学大学院理学系研究科附属植物園(小石川植物園)、新長島川親水公園、板橋区立赤塚植物園、憲政記念館、荒川自然公園 、世田谷区民家、世田谷区小泉公園→工事中のため八王子に避難移植、駒沢公園、砧公園、大田区洗足池・勝海舟夫妻の墓、足立区の柳原千草園 、薬用植物園
武蔵野市 井の頭恩賜公園、南町2民家
調布市 深大寺
東村山市 国立療養所多磨全生園内に5本
あきる野市 増戸中学校
14 神奈川 横浜市 JR根岸線新杉田駅バスターミナル 、緑区「東洋英和女学院」
鎌倉市 大船フラワーセンター
茅ヶ崎市 甘沼の成就院(茅誠司邸から移植〈JanJanニュース〉) 
16 富山 富山市 富山県立植物園
17 石川 金沢市 金沢市立伏見台小学校
19 山梨 北都留郡 上野原町民家
21 岐阜 岐阜市 本庄中学校
瑞浪市 「なんじゃもんじゃバス停」付近
羽島市 桑原中学校
土岐市 泉町白山神社
可児市 久々利
山県郡 伊自良南小学校
22 静岡 静岡市 城北公園、駿府公園
23 愛知 名古屋市 中区東別院交差点街路、若宮大通り交差点街路、大津通り街路、高岳〜小川町間の桜通街路、名鉄犬山線岩倉駅下車・岩倉神社、守山区街路、庄内緑地公園、東山植物園、白鳥公園、名城公園、市営西味鋺荘内(北区)の街路 、緑区みどりアビタ前の公園、千種区法王町(揚輝荘)
一宮市 島村にある若栗(ワグリ)神社境内、愛知県立一宮北高校、下川田町4丁目平和堂牛野店の北東角、用水路をまたぐ橋のたもと
瀬戸市 下半田川町、内田町
豊川市 真光寺
安城市 北部小学校、二本木小学校
犬山市 大宮浅間神社
常滑市 街路
春日井市 岩成台の愛知用水沿いにある水辺公園
江南市 宮田小学校、布袋中学校、蘇南公園、江南団地
稲沢市 大塚性海寺歴史公園、愛知県植木センター、市立片原一色小学校、市内の街路樹
知多市 妙楽寺
小牧市 桃花台の公園
津島市 天王川公園
丹羽郡 大口西小学校
24 三重 松坂市 創造の森
伊勢市 伊勢神宮外宮、勾玉池
尾鷲市 個人山林
25 滋賀 蒲生郡 安土町・沙沙貴神社
26 京都 京都市 洛西ニュータウン、真如堂、京都植物園、上賀茂神社
福知山市 頼光寺(朝鮮半島産)
京田辺市 民家
相楽郡 精華町光台7丁目近くの公園
27 大阪 大阪市 西区江戸堀1丁目肥後橋郵便局前街路、大阪城天守閣広場
枚方市 府営山田池公園
茨木市 大阪府立北摂つばさ高校
柏原市 大阪教育大学柏原キャンパス
交野市 植物園
29 奈良 北葛城郡 広陵町・馬見丘陵公園
30 和歌山 伊都郡 高野山
32 島根 松江市 松江城、中電前川端(朝鮮半島産)
34 広島 広島市 比治山公園、広島市植物公園
36 徳島 美馬市 安楽寺
38 愛媛 今治 新谷 吉祥禅寺別名椿寺
39 高知 高知市 県立牧野植物園
40 福岡 北九州市 戸畑区なんじゃもんじゃ通り、八幡東区八幡市民会館横、八幡西区瀬坂の森 森林公園、吉祥寺裏手公園
福岡市 市役所、福岡市動植物園、西鉄香椎花園、叶嶽神社上り口途中、九大農学部、海の中道海浜公園
久留米市 石橋文化センター
筑後市 九州大谷短期大学
春日市 春日市市役所駐車場横
大野城市 瑞穂町・セブンスデイアドベンチスト春日原キリスト教会横公園
宗像市 宗生寺
太宰府市 市役所、太宰府梅林アスレチックスポーツ公園、太宰府歴史スポーツ公園、街路、天満宮境内
糟屋郡 宇美町・福岡県立県民の森センター
遠賀郡 芦屋町・岡湊神社
浮羽郡 田主丸町・福岡県緑化センター
41 佐賀 鳥栖市 市役所、鳥栖スタジアム横広場
神埼市 姉川の往生寺、大圓寺
42 長崎 長崎市 長崎県庁、野口弥太郎記念館、長崎大学、水辺の森公園、秋寄公園、日吉中学校
佐世保市 亜熱帯動植物園
諫早市 諫早高校、真城中学校、堂崎町民家(M邸)、下大渡野町明教寺境内、山川町公園
大村市 民家「鵲窓庵」、オフィスパーク
対馬市 学校、官公庁等に多数
雲仙市 国見町多比良港附近
43 熊本 熊本市 立田山(森林総合研究所九州支所)
玉名市 玉名高校、玉名地域振興局
45 宮崎 日南市 市役所、飫肥城

【参考資料】

1986年3月15日発行
瀬戸市史 資料編二 自然
V 植物 P134からの一部抜粋

ヒトツバタゴ  モクセイ科 (p.182−138)  日本における分布は,長崎県対馬,中部地方の木曽川流域の岐阜県東濃地方・長野県西南部 そして本県犬山市と隔離分布をしている。その自生地のほとんどは,天然記念物として保護され,犬山市のものは古くから有名であった。本市では昭和53年,庄内川に面した下半田川町共有林で,自生する1株が発見された。その後昭和58年に,市内内田町の林内で1株のヒトツバタゴの自生が新たに確認された。・これにより,わずか2株にすぎないが犬山市に次いで本市も,県下2番目のヒドンバタゴ自生地をもつことになった。下半田川町の株は雄株であり、内田町のものは両性株であることが確認されている。花期には高い香りと白雪をかぶったように真白く樹冠を覆いつくして咲くその姿は,まさに名木に値する。別名「ナンジャモンジャ」は,江戸に植えられたが名前が分らないままに呼ばれていたことによるという。

-2007/08/24 瀬戸市 石川忠之氏 資料提供-

ヒトツバタゴ:交流の雪花、今年も 韓国と対馬、雨森結ぶ花に−−長浜 /滋賀

 ◇芳州庵が増やす取り組み

 朝鮮半島に近い対馬(長崎県)北端の群生地が国の天然記念物に指定され、雪のような白い花が咲く「ヒトツバタゴ」(モクセイ科)。長浜市高月町雨森(あめのもり)の「東アジア交流ハウス雨森芳州庵」で、対馬から贈られたこの「交流の雪花」が咲き始めた。【桑田潔】

 同庵は84年、県の「小さな世界都市づくりモデル事業」の指定を受け、江戸時代に朝鮮外交に尽力した儒学者、雨森芳州(1668〜1755)を顕彰する目的で建てられた。韓国の高校生らを招き、雨森地区の民家にホームステイしてもらうなど、草の根の国際交流活動を続けてきた。

 芳州は近江の国・雨森郷に生まれ、江戸で木下順庵に師事し、対馬藩に任官。江戸に向かう朝鮮通信使に同行するなど、対馬を拠点に外交・文化・学術の分野で多くの業績を残した。

 30年前から数回にわたり、芳州の墓がある対島から雨森地区にヒトツバタゴの苗が贈られた。見慣れない花で別名は「なんじゃもんじゃ」。現在、庵内に6本、同地区内に4本。初めに寄贈された木は高さ約7メートルに成長し、今年は寒さ続きのためか、開花が例年より約1週間遅れたが、まぶしい新緑の庵庭で咲き始め、そこだけ雪が舞い降りたよう。

 花を増やそうと、同庵では新芽を鉢に植え替え、近く30本の苗を地元の小学生らに贈り、育ててもらう。今夏も韓国・ソウルの高校生らを迎え、地元の人たちとの交流会を開く予定で、同庵館長の平井茂彦さん(65)は「この花は交流の証し。もっと増やして韓国と対馬、雨森を結ぶ花にしたい」と話している。

 同庵開館は午前9〜午後4時。大人300円、小中学生150円。毎週月・火曜日と祝日の翌日休館。0749・85・5095。

 
毎日新聞 2010年5月13日 地方版
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対馬のヒトツバタゴ

kani.gif (155 バイト) 韓国を望む対馬市北端、上対馬町鰐浦のヒトツバタゴ自生地は、最も規模が大きく 3,000本以上を数え、山全体がヒトツバタゴで覆われている。 5月初旬の開花時には、山に雪が積もったと見紛うほど純白の花が咲き誇り、誰もが魅せられる。その花が鰐浦湾の海面に映えて美しいことから「海照らし」という俗称もある。また、材が鉈を折らすくらい硬いというので、「鉈折らし」とも呼ばれている。

 鰐浦のヒトツバタゴ自生地は、1928年、国の天然記念物に指定された。鰐浦以外の上対馬町にも自生地があり、町指定天然記念物である。上対馬町は、1980年にヒトツバタゴを町の花木に指定し、地区ぐるみで保護に努めている。岐阜県の自生地、蛭川村と姉妹縁組をして交流を深めている。また、毎年 5月初旬のヒトツバタゴ祭りは、島内外の人気を集めすっかり定着している。

ヒトツバタゴサミット

 1999年、上対馬町で、ヒトツバタゴ自生地の国内外の自治体が集い、初「ひとつばたごサミット」が開催され、ヒトツバタゴ情報交換等のイベントが行われた。2000年は、岐阜県蛭川村で、2001年は、愛知県犬山市で開催された。

ヒトツバタゴ祭り

 毎年、ヒトツバタゴの開花に合わせヒトツバタゴ自生地、上対馬町鰐浦、比田勝地区で多様なイベントが開催される。

 

イカ干し中の背景にヒトツバタゴ(鰐浦)

色紙(絵、文字) 森 利子 氏

 

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【昨年は多数のヒトツバタゴ情報、写真、ヒトツバタゴひろばへの投稿をありがとうございました。今年もよろしくお願いします。】

 

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