時空を越えて蘇ったツタンカーメンのエンドウ
ツタンカーメンは、紀元前14世紀、エジプト第18王朝のファラオである。即位は10〜11歳と考えられ、即位後僅か9年で突然死亡した。30数年前、福岡でツタンカーメン展を見たが、とりわけ「黄金のマスク」の豪華さは脳裏に焼き付いて離れない。 ツタンカーメンのエンドウ豆は、発掘された副葬品の中から発見された。古代エジプト人が食べたであろうエンドウ豆を持ち帰ったカーター氏は、発芽、栽培に成功した。古代エジプトから脈々と活き継いできた生命力の不思議に驚く。 その後、そのエンドウ豆は、数国にわたり、栽培が続けられた。日本には1956年、米国から水戸に送られてきた。その後、古代ロマンの夢を託したツタンカーメンのエンドウは、主として小学校、教育センターを介して広がった。 私がツタンカーメンのエンドウを入手したのは、1990年のことである。朝日新聞【声】の欄の特集「ツタンカーメンのエンドウ:古代ロマンの輪を広げよう」を見て、朝日新聞から6粒届いた。 ツタンカーメンのエンドウは、日本で栽培されている種とは異なり、古代エジプト産で、エンドウの原種と思われる。 ツタンカーメンのエンドウご飯を炊くと、はじめは普通のエンドウご飯と変わらないが、保温すると、不思議なことに、徐々に赤色に変化し、エンドウ赤飯になるのである。味は、普通のエンドウご飯と同じく美味であるが、エンドウご飯の色の変化がロマンを醸しだす古代ロマン味である。 ワインレッドの花、さやの紫、エンドウご飯の不思議さは、古代ロマンにひたることができる。古代エジプトから時空を越えて現代に伝えてくれた人々に感謝し、古代ロマンの輪を広げたいものである。 育て方は普通種と同じく比較的簡単である。種子をポリ育苗ポットに、10月中旬〜11月上旬にまく。本葉が2〜3枚になったら素焼き鉢、プランタン、畑に定植し、日光に十分あてる。エジプト産であるがあまり気にすることはない。肥料は、食用なので、有機肥料を与える。支柱を立て、つるが巻きつくように、竹で編むか、ネットを張る。近くに普通のエンドウが栽培されていたら、雑種になるので気をつける。もし、白い花が咲いたら雑種なので処分する。 古代エジプトから時空を越えて蘇ったツタンカーメンのエンドウ、それを育てることは、殺伐とした現代にあって、夢でありロマンである。ワインレッド花が咲いたときの感動、紫のさやが付いたときの喜び、そして収穫の感激、さらにツタンカーメンのエンドウ赤飯を食べるときの満足感、それは心を癒してくれる。 2002/4 |