つ れ づ れ

 

            

パソコンは至上の楽しみ


 1992年春、JALSA事務局に照会し、意思伝達装置(ソフト・パソパルPC)を入手して、喜び勇んで手紙等を打ちまくっていたものです。
 1988年に発症して4年経過し、声を失い、手足が全く動かなくなっていました。新聞、テレビ、音楽、それにリハビリ通院の単純な生活が続いていて、気が滅入っていました。それだけに、タッチセンサーを頬で打つ操作には、多少もどかしさを感じても、まさに一服の清涼剤ににて、ワープロに向かうと心安らぐのでした。「きのうまでの私は、さようなら」を宣言したものでした。
 おりしもそのころ、地元対馬と長崎のアマチュア無線(ハム)クラブの仲間が、私にハムが再開できないものかと、検討してくれていたのです。私はその話を聞き、感謝と期待で心ときめきました。その年の4 月、退職挨拶状がきっかけで、私がワープロを打てることを知り、検討を始めたとのことです。こんなこともあろうものかと(?)ハム免許更新をした矢先のことです。
 その結果、ついにセンサー・パケット通信ソフト「HBTERM」は完成したのです。ハム仲間の好意でソフトの開発から調整、ノウハウとお世話いただき、パケット通信ができるようになり、コミュニケーションが広がったのです。

T パケット通信
  パケット通信とは、アマチュア無線を使ったパソコン通信です。パケットとは、本来「小包」という意味で、送りたい情報を宛名・差出人(コールサイン)などを付けたパケットという「情報の小包」にして送信します。パケットを作る作業や通信は、TNC(コンピュータを内蔵した制御装置)が自動的に行います。パケット通信には、チャット、会議、メールボックス、RBBS(無線電子掲示板)のモードがあります。

U パソコン
 夢はさらに膨らむのでした。意思伝達装置(以下センサーパソコン)もパソコンですが、センサーパソコンではソフトも限定され、一般のソフトは使えません。
  そこで、センサーパソコンでもう一台のパソコンをコントロールできるのではないかと考えました。この夢・構想をHBTERMを開発した田上氏にパケット年賀で伝えたところ、前記ハムグループと連絡を取り合い、ついにパソコンコントロールソフト「HBkey」の開発は完成したのです。1993年9 月のことでした。センサーパソコンと以前使っていたPC9801を使用しました。
  ソフトの開発からバージョンアップ、機器の提供、調整、ディスプレイ台の作製、メンテナンスとまさにハム仲間におんぶにだっこのパソコン再開です。

 パソコン再開は、私をさらにプラス志向にさせました。意欲的で前向きな姿勢は、多くの出会いを生みました。
 過去に使っていたソフトも使用可能だし、なによりも嬉しいのは、ファイル、データ類が日の目を見たことでした。それを基に、私のライフワークである「ホタルの研究」をまとめ、地元生物研究誌、地誌に発表することもできました。「一太郎」は、センサーワープロより機能が、比較にならないほど大きく、原稿、手紙、カード類、年賀状・・・とフル活用です。図形ソフトを使っての増改築の設計、毛筆、データベース、囲碁、ゴルフ、天体シミュレーション・・・と楽しみは増えるばかりです。

V Windows 95とCD-ROM
 パソコンの楽しみを再び味わうと、夢はとめどもなく膨らむばかりです。パソコンが古くなりHDDが故障がち、新種に買い換えました。爆発的ブームのWindows 95、CD-ROM ドライブ等が標準装備です。
 試行錯誤を繰り返し、楽しみながら自分のものになっていきます。機能性、操作性の良さ、豊富なプログラム、アクセサリが特徴です。「テキストリーダ」を使えば音声も出ます。さらに、マウス操作は、学習機能で瞬時にポインタが自動移動するソフトがあり、使って重宝です。
 特筆すべきはCD-ROM です。読書が介助なしでできるのです。「新潮文庫の100 冊」を持っていますが、代表的な日本文学、世界文学が100 篇以上入っています。1 枚のCDに100 冊の本が詰まっているのです。本の選択は、目次にポインタを合わせるだけです。続きを読みたいときは、しおりに合わせればよく、ページをめくるときは、センサースイッチをタッチするだけです。さらに、朗読付きの本もあります。「マルチメディア植物図鑑」は、色がきれいで、図鑑機能だけでなく、あらゆる角度から解説し、BGM、音声解説付きで十分楽しめます。

W インターネット
 残すは、やはりインターネットです。コミュニケーションの拡大ははかりしれません。主治医の先生他の勧めもあって、モデムを購入、セッティングしてもらいました。
  メールの交換、ホームページのダウンロード等で情報量は飛躍的に拡大しました。ニュース、科学、文化、芸術、スポーツ、医療、趣味、娯楽、生活全般・・・と、ありとあらゆる情報が得られます。大好きなプロ野球もリアルタイムで途中経過、結果が得られます。好きな球団のホームページを覗けば楽しみは倍増です。また、新聞を読み、電子図書館で読書もできます。さらに、チケット予約、ショッピングまでできるのです。それに、病院他のホームページからALSの情報も得られます。好奇心は、明日へのエネルギーの源です。夢を探し、考え、楽しむ、ベットの上の私にとって、毎日が楽しく、充実のときです。
 2000年6月には、念願のホームページ「なんじゃもんじゃランド」を開設しました。

 2003年4月、今まで愛用したパソコンシステムを一新しました。入力支援ユーティリティにオペレートナビEXを導入しました。パソコンは、PC-VF9005Dで、OSはWindowsXPです。

 多くの人の善意と励ましで、ややもすると沈みがちな心を幾度となく乗り越えてきました。1996年、8 年半目に気管切開し、呼吸器を装着し、3 ヶ月も入院しました。暮れには、パソコンの待ってる我が家に帰り、在宅療養を続けています。
 多くを望まなければ、幸せはどこにでもあるとか。大好きなジャズ、クラシック、ポピュラーを聴きながら、パソコンをするとき、私は小さな幸せを感じています。意思伝達装置に始まって、アマチュア無線、パソコン、FAX、インターネットとパソコン三昧の生活です。パソコン、それは私にとって、かけがえのない財産なのです。
 四季折々の変化を耳目にしながら、18年目の春を迎えました。身体はむしばまれても、心まで老けないために、理想と希望を持ち続けたいものです。そして、心豊かに暮らしたい、それが念願です。二度とない人生だから!

  この稿は、JALSA機関誌に掲載されたものに加筆したものです。

 

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