れ づ れ

 

            

ピンクに彩る対馬の春

 

 厳しい冬の薄暮のひととき、夕日をいっぱい浴びて、セピア色の山肌が薄紫色に刻々と変化してゆくさまは、落葉樹の山肌だからこそ味わえる光の彩である。その山肌は、重いコートを脱ぎ捨てる頃、ピンクに染まる。ゲンカイツツジが咲き誇り、ピンク一色になるのである。対馬の春を告げる風物詩である。

 ゲンカイツツジは、北部九州に自生する野生ツツジである。落葉種で、葉より花が先に付く。樹高は2mを越えるものもある。花の色は、ピンクで、濃いものから非常に薄いもの、白混じりまでさまざまである。稀に白花も見つかるが、今では幻の白花となった。

 海岸にもゲンカイツツジは自生する。対馬のほぼ中心に位置する風光明媚な景勝地、浅茅湾に自生するゲンカイツツジは、数は減少したが、海に映え、早春の浅茅湾を見事に演出している。

 4月になると、ゲンカイツツジに替わってコバノミツバツツジが開花する。この種は全国に自生し、名前のように3葉の野生ツツジである。遠目では区別が付かないので、地の人はひっくるめてゲンカイツツジと呼ぶ人もいる。2月下旬から5月上旬まで対馬の山々、海岸はピンクに彩る。

 5月になると、チョウセンヤマツツジが開花する。常緑種で、山頂付近や河岸に自生し、ヨドガワツツジ似ている。山頂付近に自生するチョウセンヤマツツジは、風をまともにあたること、岩場、礫が多く根が張りにくいことで茎が上に伸びず絡み合いながら地上を這う。

 上県町の河岸にもチョウセンヤマツツジは自生している。川を上っていくとかなり広い淵があった。カモが450戯れていた。邪魔にならないように息を潜めていたが、いっこうに飛び立つ様子がない、やむなく逆行し、回り道をし再び上流に向かう。

 崖に根を一部残して垂れ下がったチョウセンヤマツツジがピンクの花をつけている。花の命のたくましさを感じる。23カ所、花と2030o程度の新株を観察しながら上流へ進むと岩場に出た。岩の割れ目に根を張り、十数pの株に可憐な花を観た。汗をかいたので澄みきった流れでで顔、手を洗う。とても気持ちが良い。黒褐色のカワニナがいる。清流にしか生息しないゲンジボタルの餌である。

 川岸の土手に目をやると、1.5m前後の株にたくさん花をつけていた。そこには、オオチダケサシの群落があった。  

2002/4


チョウセンヤマツツジ

 

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